「うちもそろそろAIをやらないと」——経営会議でそう決まったものの、気づけば半年、何も進んでいない。心当たりはないでしょうか。原因をたどると、たいてい同じところに行き着きます。「で、誰がやるのか」が決まっていないのです。実際、「ツールの契約やアカウント配布までは進んだのに、3ヶ月後には誰も使っていない」という相談は、ゼットリンカーにも定期的に寄せられます。
先に、要点をまとめます。
- AI推進が止まる最大の理由は技術ではなく体制。「誰がやるか」が曖昧なままでは、ツールを契約しても定着しない
- 体制づくりの選択肢は大きく4つ。専任人材の採用/既存社員の兼任/コンサルへの依頼/外部AI部署
- どれが正解かは会社の状況次第。この記事では4つの向き不向きと、「外部AI部署」という比較的新しい選択肢の仕組みを整理する
なぜ「AI推進の担当者」が決まらないのか?
理由は単純で、AI推進が「ITに詳しい」だけでは務まらない、業務と技術の両方にまたがる仕事だからです。
AI推進の実際の中身は、ツールの契約ではありません。どの業務にAIが効くかを見極める調査、費用対効果の見積もり、試作、現場への定着、効果測定——この一連のサイクルを回し続ける仕事です。総務や情シスの「ついで」で回る量ではなく、かといって専任を置くほどの確信もまだ持てない。多くの中小企業が、この中間地帯で止まっています。
さらに、AI人材の獲得競争は大企業も含めた全業界で続いており、中小企業が専任者を採用するハードルは年々上がっています。「良い人が見つかったら始めよう」と待っているあいだにも、同業他社は先に進んでいく——これが2026年の実情です。
体制づくりの4つの選択肢を比べると?
選択肢は「専任採用」「兼任」「コンサル」「外部AI部署」の4つです。立ち上がりの速さ・固定費・実行力・ノウハウの残り方がそれぞれ違います。
AI推進体制の4つの選択肢(専任採用・既存社員の兼任・コンサル依頼・外部AI部署)の強みと注意点の比較図
| 選択肢 | 強み | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 専任人材を採用 | 社内に専属の実行力とノウハウが残る | AI人材の採用は競争が激しく、給与水準も高い。1人への依存リスクも |
| 既存社員の兼任 | すぐ始められ、追加費用がない | 本業との両立が難しく、調査や検証が後回しになって止まりがち |
| コンサルに依頼 | 戦略・計画づくりの専門知見を借りられる | 提案やレポートが成果物の中心になりやすく、開発・実行は別途必要になることが多い |
| 外部AI部署 | 調査から開発・定着まで実行してもらえる。採用が不要 | 月額費用がかかる。業務の情報共有など社内の協力は必要 |
4つに絶対の優劣があるわけではありません。すでにITに強い人材がいる会社なら兼任からの育成が最短ですし、AI活用を経営の中核に据えるつもりなら専任採用に踏み切る価値があります。問題は、「採用は難しい、兼任は回らない、コンサルは実行まで頼めない」という三すくみに入ってしまった場合です。
「兼任でがんばる」は、なぜ止まりやすいのか?
**4つの中でいちばん選ばれやすいのは兼任ですが、いちばん止まりやすいのも兼任です。**理由は担当者の能力ではなく、構造にあります。
兼任でAI推進を任された担当者は、多くの場合こう進みます。まず情報収集を始め、セミナーや記事で知識を集める。次にツールの比較表を作る。ここまでは順調ですが、いざ試す段階になると本業の繁忙期が重なり、検証が止まる。数ヶ月後に「あの件どうなった?」と聞かれて再開するものの、そのあいだにAIの状況が変わっていて、また情報収集からやり直し——。
これは本人の頑張りの問題ではなく、構造の問題です。兼任が機能するには、次の3つが揃っている必要があります。
- 時間:週の稼働のうち、まとまった検証時間が確保されているか(「手が空いたら」は、確保されていないのと同じです)
- 権限:他部署の業務に踏み込んでヒアリングし、試験導入を決められる立場か
- 評価:AI推進の成果が、本人の評価にきちんと反映される仕組みがあるか
裏を返せば、この3つを用意できる会社なら兼任でも進みます。用意できないまま「ITに詳しい若手に任せる」形にすると、担当者だけが疲れて止まる結果になりがちです。
「外部AI部署」とはどんな仕組みなのか?
**外部AI部署は、社外の開発会社が「御社のAI部署」として一定期間(多くは年単位)伴走し、調査・効果見積もり・開発・定着までを実行する形の支援です。**助言やレポートで終わるのではなく、「作って業務に載せる」ところまでが仕事に含まれる点が、従来のコンサルティングとの違いです。
ゼットリンカーが提供している外部AI部署(年間パートナー)を例に、仕組みを紹介します。
- 部署ごとにサイクルを回す:業務の棚卸し → 設計 → 導入・開発 → 定着 → 評価を1周2〜3ヶ月で回し、1年で3〜4部署に広げていく
- 着手前に効果を数字にする:削減できる時間や費用対効果を見積もってから「やる・やらない」を判断する。感覚で走らない
- ゴールは内製化:1年後に「自社でAIが回る状態」にして引き渡すことを目標に置く。外部に依存し続ける前提ではない
- 契約は準委任・四半期見直し:3ヶ月ごとに成果と計画を見直し、方向転換や中途解約を判断できる区切りを設ける
進み方のイメージも具体的にしておきます。最初の1〜2ヶ月は診断です。全社の業務を見渡して「どの部署の・どの業務から」の優先順位を決め、効果が見えやすい部署で最初のサイクルを回します。次の四半期でその試作を本番化し、並行して次の部署の棚卸しへ。後半は使う人を増やす定着と社内の利用ルールづくり、そして運用の引き継ぎへと重心を移していきます。四半期ごとに「かけた費用」と「戻ってきた業務時間」を見比べながら進むため、走りながらの方向修正ができます。
見極めのポイントは、「いなくなること」をゴールにしているかです。外部の支援は続けるほど費用がかさみます。だからこそ、運用ルールやドキュメントを整えて社内に引き渡すところまでが設計に含まれているかどうかが、この形の支援を選ぶときの分かれ目になります。
費用はどう考えればよいのか?
外部AI部署の費用は月額制が一般的で、比較対象は外注費ではなく「専任者を1人雇った場合の人件費」です。
専任のAI人材を採用する場合、給与に加えて採用コスト・立ち上がりまでの教育期間・退職リスクを抱えることになります。外部AI部署は、これらをまとめて月額に置き換える考え方で、金額は関与の濃さ(対象部署の数・頻度)によって変わります。
大切なのは、金額の絶対値よりも**「その費用で、どれだけの業務時間が返ってくるか」**を着手前の効果見積もりで数字にしてから判断することです。見積もりの結果「効果が薄い」と分かれば、始めないという判断も含めてできます。この「数字を見てから決められる」ことが、感覚でツールを契約して定着しなかった過去の失敗との、いちばんの違いです。
なお、契約前に次の3つを質問してみると、支援の中身がよく分かります。「実行(開発)まで含まれますか、それとも提案までですか」「契約が終わったとき、社内に何が残りますか」「効果は、いつ・どうやって数字で確認できますか」——この3つに具体的に答えられる相手なら、呼び名がコンサルでも外部AI部署でも、実務は信頼できるはずです。
どんな会社に向いているのか?
**向いているのは「AIに使えそうな業務は思い当たるが、任せられる人がいない」会社です。**具体的には、次のような状況に心当たりがある場合です。
- 経営層はAI活用に前向きだが、社内に旗振り役がいない
- 「AIで何かやろう」という号令が、過去に一度立ち消えになっている
- 過去にツールを導入したものの、現場に定着せず止まった経験がある
- 複数の部署に「紙・Excel・属人化」の業務が残っている
判断に迷う場合は、「AIに任せたい業務を3つ挙げられるか」を試してみてください。3つ挙がるなら、部署をまたいで面で進める外部AI部署に向いています。
逆に、向かないケースもあります。AIで解きたい課題がすでに1つに絞れているなら、年間契約よりも単発の開発やPoC(概念実証)のほうが安く早く済みます。まず1テーマだけ確かめたい場合は、1〜2ヶ月のAI PoC開発から始めるほうが身の丈に合っています。
ゼットリンカーなら、このような形で支援できます
**ゼットリンカーの外部AI部署は「開発会社が母体」であることが特徴です。**コンサルティング会社が実行部隊を別に探すのではなく、調査・効果見積もりから、AIエージェントや業務システムの開発、業務への定着までを、同じチームがそのまま実行します。
支援の形を具体的に挙げます。
- 月次の定例とチャットでの伴走:年間ロードマップに沿って業務を進め、月次で進捗と課題を共有します
- 四半期ごとの数字のレビュー:「かけた費用」と「戻ってきた業務時間」を3ヶ月ごとに見比べ、続ける・方向を変える・やめるを判断できる区切りを設けます。契約は準委任・四半期見直し付きなので、「1年縛られるのが不安」という場合も3ヶ月ごとに立ち止まって判断できます
- 最初の部署の選び方から一緒に:診断では、効果が見えやすく現場の協力を得やすい業務から着手します。最初の1周で「AIは使える」という実感を社内に作ることが、2周目以降の推進力になるためです
- 開発は身の丈で:Next.jsフルスクラッチ×AI駆動開発で、大掛かりなシステムではなく「その部署の業務に合った道具」を素早く作ります。すでに導入済みのツールがある場合は、それを活かす前提で調査するため、いまお使いのものを無駄にしません
開発の実績も、この進め方の裏付けになっています。製造業のお客様では社内文書をAIで検索できるRAGシステムを構築し、物流のお客様ではExcelの二重入力をなくす業務管理システムを作ってきました。どちらも「現場の業務を調査してから作る」という、外部AI部署と同じ順番で進めた仕事です。
もうひとつ、私たち自身の働き方もお伝えしておきます。ゼットリンカーは「3回以上くり返す業務は、AI化する」を社内ルールにした、全員がAIを使って働く組織です。お客様にご提案する進め方は、私たちが毎日実践している働き方そのものなので、机上の方法論ではなく「実際にやってみてどうだったか」を添えてお話しできます。
支援の範囲は御社の状況に合わせて設計するため、「まず1部署だけ」「特定の業務領域だけ」といった形のご相談も可能です。まず小さく試したい場合は、このサイクルを1周だけ切り出したAI PoC開発から始めることもできます。年間で任せるか、1テーマから確かめるか——御社の状況に合わせて、無理のない入り口をご提案します。
よくある質問(FAQ)
Q. 外部に任せると、社内にノウハウが残らないのではないですか?
A. 任せ方によります。「作って納品して終わり」の形だとノウハウは残りません。運用ドキュメントの整備・社内の利用ルールづくり・引き継ぎまでを契約範囲に含む形なら、外部支援でも社内に資産が残ります。契約前に「終わったとき、何が残るか」を確認するのが確実です。
Q. コンサルティングと何が違うのですか?
A. いちばんの違いは成果物です。コンサルティングは戦略や計画の提案が中心で、開発・実装は別の会社に発注することが多くなります。外部AI部署は、調査・効果見積もりに加えて、AIエージェントや業務システムの開発・定着までを同じチームが実行します。
Q. 小さい会社でも頼めますか?
A. 会社の規模よりも「AIに使えそうな業務があるか」で判断するのが適切です。むしろ、専任のAI担当を雇うほどではない規模の会社にこそ合った形です。関与の濃さ(頻度・範囲)は規模に合わせて調整できます。
Q. まず何から始めればよいですか?
A. 「どの業務にAIが効きそうか」の棚卸しからです。年間で任せるかどうかは、その後で構いません。1テーマを1〜2ヶ月で確かめるPoCから始めて、手応えを見てから体制を考える順番でも遅くありません。
まとめ
- AI推進が止まる最大の原因は「誰がやるか」の不在。体制の選択肢は採用・兼任・コンサル・外部AI部署の4つ
- 兼任で進めるなら「時間・権限・評価」の3点が揃っているかを先に確認する
- 「採用できない・兼任は回らない・コンサルは実行まで頼めない」の三すくみに入ったら、外部AI部署という選択肢がある
- 選ぶときの見極めは「実行まで含むか」「内製化して終わる設計か」「着手前に効果を数字にするか」の3点
ゼットリンカーの外部AI部署(年間パートナー)は、業務調査と効果見積もりから開発・定着までを実行し、1年後に自社で回る状態にして引き渡すことをゴールにした年間契約の支援です。「うちの場合はどの選択肢が合うか」という段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
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