CRM、予約管理、会計ソフト、チャットツール、メール配信、タスク管理、ファイル共有、勤怠管理、請求書発行、顧客アンケート——気づけばSaaSが10個を超えていた。そんな状況に心当たりはありませんか?
1つひとつは月額数千円でも、10個集まれば月15万円、年間180万円。しかもツール同士はつながっていないから、同じ情報を何度も入力する。「あのデータどこだっけ?」と探す時間が毎日発生する。新しい社員が入るたびに、10個のツールの使い方を説明しなければならない。
こうした状況は、多くの中小企業が直面している課題です。SaaSは1つひとつを見れば優れたサービスですが、数が増えるにつれて管理の負担も比例して大きくなります。
SaaSが増えすぎたときに起きること
コストの膨張
SaaSの月額料金は年々上昇傾向にあります。主要SaaSの平均値上げ率は年10〜15%程度とも言われており、「導入時は安かったのに、3年後には想定以上のコストになっていた」というケースも珍しくありません。
さらに見落としがちなのが、使われていないライセンスや機能の重複です。Zylo社の調査によると、企業のSaaS支出の約25〜30%が未使用ライセンスや重複契約に費やされているとのことです。
実際に棚卸しをしてみると、「このツールの有料プランに含まれている機能と、別のツールの機能が完全に被っていた」という発見は非常に多いものです。
データのサイロ化
顧客情報がCRMに、対応履歴がチャットツールに、売上データが会計ソフトに、予約状況が予約管理システムに——情報がツールごとに分断されていると、ビジネスの全体像が見えなくなります。
中小企業白書でも、「ツールの乱立・データのサイロ化」がDX推進の主要な障壁として挙げられています。せっかくデジタルツールを導入しても、データが連携されていなければ「デジタル化されたアナログ作業」になってしまいます。
例えば、あるお客様が「先月も来店してくれた常連さん」だと気づくためには、予約システムの履歴とCRMの顧客情報を突き合わせなければなりません。これが自動で紐づいていれば、スタッフは自然と適切な対応ができます。
学習コストと属人化
10個のツールには、10通りのログイン画面、10通りのUI、10通りの操作方法があります。
IT専任の担当者がいない中小企業では、各ツールの操作に詳しい社員が限られがちです。その社員が不在になったり退職したりすると、「このツールの設定を変えたいけど、誰もやり方を知らない」という事態が起こります。
新入社員の教育においても、10個のツールの使い方を順番に教える時間は相当な負担です。ツールが少なければ、その分早く実務に入れるはずです。
解決の方向性:「減らす」ではなく「統合する」
ツールが多すぎることが問題なら、減らせばいい——そう考えるのは自然です。しかし、「便利だから使い始めたツール」を単純に解約するのは難しいもの。必要な機能を失ってしまえば、業務に支障が出ます。
本質的な解決策は、必要な機能はそのまま残しながら、1つの統合されたシステムにまとめることです。
統合の具体的なイメージ
- 顧客管理 + 予約管理 + メール配信 → 1つのダッシュボードで完結
- 日報 + ナレッジ共有 + シフト管理 → 1つの業務基盤に集約
- ホームページ + 予約 + CRM・自動エンゲージ → 1つの関係づくりプラットフォームに統合
これは「何でもできる巨大ツール」を作るという意味ではありません。自社の業務に本当に必要な機能だけを、つながった状態で持つという考え方です。使わない機能は載せない。だからシンプルで、覚えやすい。
統合システムがもたらす変化
二重入力がなくなる
顧客情報を1回入力すれば、予約管理にもメール配信にも売上分析にも自動で反映されます。「同じことを何度も入力する」という日々の小さなストレスが解消されます。
1日15分の二重入力が解消されるだけでも、年間で約60時間、人件費に換算すると数十万円のコスト削減になります。
データが横断的に活用できる
顧客の来店頻度、利用金額、問い合わせ内容、キャンペーンへの反応率——これらが1つのシステムに集まると、見えてくるものがあります。
- 「月2回以上来店する優良顧客は全体の15%で、売上の40%を占めている」
- 「メール配信後に予約した顧客のリピート率は、配信しなかった顧客の2倍」
こうしたインサイトは、データがバラバラに管理されている状態では得られません。
教育コストが下がる
ログインする場所は1つ。画面のデザインは統一。データの探し方も1パターン。新入社員に覚えてもらうことが大幅に減ります。
ITに詳しくないスタッフでも迷わず使えるシステムは、結果的に組織全体のデジタル活用度を底上げします。
統合への3つのアプローチ
アプローチ1:iPaaS(Zapier、Make等)で既存SaaSをつなぐ
最も手軽な方法です。今使っているSaaSを残したまま、ツール間のデータ連携を自動化できます。小規模な連携であれば効果的ですが、連携できる範囲や深さに限界があり、根本的な解決には至りにくいのが実情です。
アプローチ2:オールインワンSaaSに乗り換える
HubSpotやkintoneのような統合型SaaSに移行するパターンです。ある程度の統合効果は得られますが、汎用的に設計されたサービスのため、自社の業務フローにぴったり合うとは限りません。特に業種固有の業務がある場合は、カスタマイズの限界に直面することがあります。
アプローチ3:自社専用の統合システムをオーダーメイドで構築
自社の業務フローに沿った統合システムを設計・開発するパターンです。初期投資は必要ですが、業務にフィットした使い勝手、データの完全な統合、そして長期的なコスト最適化を実現できます。
どちらも「全部入り」のパッケージではなく、お客様ごとに最適な構成をご提案するスタイルで開発しています。
まずは「SaaS棚卸し」から始めてみる
大がかりなシステム移行の前に、まずは現状を把握することが第一歩です。
- 自社で利用しているSaaSを全てリストアップする
- それぞれの月額費用、利用人数、主な用途を整理する
- 「本当に使っている機能」と「契約しているだけの機能」を仕分ける
- ツール間でデータの手動転記が発生している箇所を特定する
この棚卸しだけで、月額数万円の見直し余地が見つかることも珍しくありません。現状が可視化されると、次のステップも自然と見えてきます。
まとめ
SaaSは便利なツールですが、数が増えすぎると管理コスト・データ分散・学習負担という新たな課題を生みます。
解決の方向性は「必要な機能を我慢して手放す」ことではなく、**「自社に合った形で賢く統合する」**ことです。統合によって得られるのは、コスト削減だけではありません。データの見える化、業務のスピードアップ、社員の働きやすさ——組織全体の底力が上がります。
この記事を書いた人
株式会社ゼットリンカー